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PhD
PhD1年生のときは
先輩たちの仕上げたPhDの分厚い黒い本を見るたびに
うわーすごい
と驚嘆した

はじめのacknowledgementを読むと
感謝の言葉がつらつらと書いてあり
人ごとながら何となくジーンとしてしまって
私の番が来たら涙なしには書けないのではないかと余計な心配をした

いざ自分がPhDの終わりに近づいて来て
acknowledgementを書いている
それは他のページを書くのと同じように
当たり前のように思えるから不思議だ

うわーすごいって思ってたけど
毎日毎日実験室にはいり
何回も何回も同じ作業を繰り返し
いつのまにかそんな一年目の頃のことを忘れて

宇宙へいった向井さんに
「宇宙に行って人生変わりましたか?」
と尋ねる
それが愚問であると彼女の夫が本に書いていた

毎日毎日そのためのシュミレーションをして
当たり前になったからこそできること
いきなり人生が変わって宇宙飛行士になるわけではない

PhDは長く辛い4年間だった
オペラ歌手になって舞台の上で観客を前に
歌えない悪夢を私は何度も見た
音楽も歌詞もしらない
夢のなかで恐怖でおののいた

もしかしたらオペラ歌手は
手術室で、はい、とメスを渡される夢をみて
恐怖に震えるのかもしれない
それともこれを全部読みなさいって文献の束を渡される悪夢かな
とすこし可笑しかった

毎日の一歩一歩はこんなにも小さいけれど
何年も続けると行き先がこんなにも遠くなる

あまりにも毎日見慣れた道なので
その風景に驚かされることはないけれど
もしこの道を高速バスでやってきたのなら
きっと4年前に見ていた世界との違いに驚くのかもしれない

私はここまで
こんなに遠くまでやってきた
acknowledgementを書いていても
泣かない自分は結構えらい



*ようやっとPhDの論文の仕上げになりました
長かった〜
まだこれから最終面接などなど来年に控えているのですが
今日はこんな気持ち。
by ninotika | 2005-12-19 10:19 | WORKING


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