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関節リウマチと変形性膝関節症の遺伝子治療 gene therapy
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        photo: Queen gardenにいた灰色リス

昨日(2004年5月18日)アメリカのハーバード大学 Harvard Medical School からクリス エバンス Chris Evans 教授がエジンバラに講義に来たのでその内容をメモ代わりに残しておこうと思います。

遺伝子治療というとどの段階で遺伝子を操作するのだろうと思っていたのですが、簡単にいうと治療に’必要なもの’を体の一部分の細胞の遺伝子に組み込んであげて、細胞がその’必要なもの’を作るようにするというものだということがわかりました。つまり、いままでは治療として薬を飲まなくてはいけなかった成分が、飲まなくても体のなかで作られるようになる、ということです。例えば(どの程度成功しているのかはわかりませんが)糖尿病の患者さんがインスリンの自己注射をしなくてもいいようインスリンをつくる遺伝子を組み込んだらどうか、というのがアイデアです。

今回の講義は関節リウマチと変形性膝関節症の治療についてですが、この関節症の治療に’必要なもの’はエバンスのグループではインターロイキンワン(IL-1) という関節を壊す炎症物質の拮抗に焦点を当てています。インターロイキンは普段は関節の成長の一旦になっているようですが、関節リウマチや変形性関節症では活動が激しくなりすぎている または産生される量が多すぎるために壊れる機能ばかり働いてしまっています。<簡単にイメージするならインターロイキンワンは悪者です。> で、この活動をおさえるためにインターロイキンワンのリセプター拮抗剤 (IL-1Ra) が有効で、これを関節のなかでもっと作らせようというのが目的です。<簡単にいうならおとり作戦です。>

現時点では Kineret という IL-1Ra のお薬がでていて 
http://www.kineretrx.com/ 
これをかなり頻回に関節の中に注射しなくてはいけません。お薬自体も高価ですし注射される方も痛いし大変な割には、効果の持続性が短く関節内での効果が現れる濃度を保つことができないのが欠点だそうです。ネズミ実験では血中濃度が5ug/mないと効果がでなかったそうですが、関節内注射後24時間もたつと血中濃度はほぼゼロに近づくとのこと。

理想的にはこの遺伝子治療が成功すれば注射もいらないで関節内の細胞が IL-1Raを作ってくれ、関節破壊が抑えられるといいわけです。

ではどのようにこの IL-1Ra の遺伝子を関節の中に入れて細胞に作らせるようにするのか、というところにくるとものすごく話が複雑になります。おおまかにいうとウイルスを使う viral (adenovirus, retrovirus etc ) と使わない non-viral (naked DNA + carrier: liposome, polymer) の方法で滑膜細胞に組み込むようです。聞いてるだけでなんだか大変そうな手技でした。ウイルスの種類もあのエイズの HIV まで使うそうです。

組みこんだあとも細胞がずっとその組み込んだ遺伝子を作り続けてくれるとは限りませんし(体の中のT細胞が新しい遺伝子をもった細胞を壊してしまうようです)、どんな副作用がでてくるかも定かでないので、まだまだものすごい量の実験が必要そうでしたが、でもアイデアはつかめたので今後どうなっていくのか注目ですね。馬の変形性膝関節ではうまくいったそうですし。

関節リウマチは原因不明でどうしてか関節が壊れる病気です。関節リウマチの治療に関節に焦点をあてて治療するアイデアに期待がもてますね。完全に治ることがなくても破壊をや痛みや炎症を抑えるところから始めて、なんとかあと10年20年先にはより有効な治療法が見つかっていくことを願ってます。
by ninotika | 2004-05-05 23:13 | WORKING


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